「悼む人」天童荒太:著

[悼む人]天童荒太:著を読んで・・・。

人の死に軽重はあるのか。忘れ去られていく人の死。他人への愛と自己愛の違い。末期癌と在宅医療。人の愚かさを知ってしまったと男の絶望。等、一つの物語の中に複数のテーマが織り交ぜられており、それぞれが独立していながらも、軸になる「悼む人」を中心にそれらが有機的に絡み合い、ひとつの作品が出来上がっている。とても丁寧にそして大切に作りあげられた小説という印象がした。中でも、静人と倖世のお互いを思う気持ちが確認されてから、それでもあえて別れるという部分が特に印象深い(主題からは外れるかもしれないが・・・)。
7人の主な登場人物に、それぞれ多かれ少なかれ共感できる部分があり、その人物を通じて自分自身の心の奥底を焙り出された気持ちがする。その為、長く心に残るだろう、そんな一冊となった。
各登場人物の的確な描写や、扱う主題の表現方法が練り上げられて違和感が無く、あっという間に物語の中に吸い寄せられていってしまう。天童荒太の作品は、[永遠の仔]に続き、二作品目だが、前に引続きこういった期待を裏切らない作品を送り出してくれる。ありがとう。


悼む人

悼む人